見ておきたかったもの

10月最後の日曜日に珍しく疲れきるまでサーフィンした
それには訳があってこの後2日間吹き続けるオンショア
の後の北東の風に磨かれた真西のうねりが良いことは
少し長くサーフィンをしているものには簡単すぎる問題だった

一般の方々にとって台風の位置とうねりの入り方はニュースに
ならなければ関係のないものだ、近くに来なければ
騒ぎ立てることもない
しかし湘南のサーファーにとってこの西ウネリはとても大切な
タイミングだと理解していて、僕のもっとも好みの波となる

大きさの問題ではない質の問題であるその波をスルーして
向かわなければ見ておかなければならないものが
あったのだ、それは南アルプスの奥深くに人の手で汚されては
自然が壊し再生してきた、秘境が存在している

それが人間の利便性と欲だけで再び破壊されようとしている
その森と水を目に焼き付けたかったから、そして匂いと空気を
確かめたかったからこのラストチャンスに出かけて行ったのだ
来年ではもう遅くすでに遅かったかもしれないのだが
それでも素晴らしいだけでは表現が足りない大自然が
迎えてくれた、夜になればカモシカの鳴き声は止むことはなく
水の中にも森の中にも生き物たちが息づいていた

もちろんそこに育つ木々たちは幹が太く素晴らしい枝ぶりで
秋のグラデーションを誇っていた
その素晴らしい自然が壊されようとしている現実に
人間の欲とはつくづく際限がないということに虚しくなった

この目でしっかりと見てきた森と渓流はけっして忘れないだろう
落胆するだけでなく、数年後にどう変化して行ってしまうのか
再び確かめに来ようと、心に誓って山を降りた

山から海に繋がる水の現実も見てきた、なぜ浜が減っていくのか
その理由を調べて見てほしい、ほしいものをほしいだけ
有り余るものをさらにほしいと願う人間の欲望がバランスを崩して
このサイクルを作っていることを学んでほしいと切に願う

ほどほどに身の丈で、身の程に生きることだと聞いたことがある
まさにそれがこれから問われるサーファーの生き方かもしれない
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